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きらら通信
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2017年7月号 【158】

 きららの定期購読者数がうなぎ上り。本誌連載の河治和香さんが、機会あるごとに「きらら」の宣伝活動を展開してくださっているおかげです。河治さんをきらら親善大使に任命したいぐらいです。
 きららは、年12回刊の月刊誌。この雑誌から年間10冊ほどの単行本が刊行されます。単行本で買うと1冊1500円×10冊、合計15000円かかるところ、今なら年間購読お申し込みで2000円で読める!(怪しい通販みたいですみません……)お申し込み方法は、次のページに! 本好きなあなたに、年間定期購読をオススメします!(H)

子どもの頃に住んでいた街に行った。駅前にタワーマンションが建ち、書店はなくなり、スーパーマーケットは洋品屋に。急だったはずの坂もそうは感じなかった。でも見覚えのある街並みは残っていた。(ひ)

『パリが愛した写真家』という素敵な映画を観ました。ロベール・ドアノーという写真家を描いたドキュメンタリー。ピカソや詩人プレヴェール、最後に堀江敏幸さんも登場する至福の80分でした。(K)

5月の連休明けに桃いろの花が一輪開いた。連休中も出社ついでに仕事机の植木鉢に水やりを欠かさなかった。花の命は意外と長く、6月1日現在も活き活きしている。自分が編集した本も、と願う。(お)

休日に友人と「いかにもハイキング」という恰好で、高尾山口駅へ行った。蕎麦屋や食べ歩きなど、駅周辺の充実ぶりに興奮するうち、結局山登りに至らず夕方に……。次はせめてリフトには乗ろう!(m)

2017年6月号 【157】

「きらら」リニューアル号はいかがでしたでしょうか。表紙イラストに田村セツコさん。表紙裏で青山七恵さんの「きららちゃんのつむじ風日記」がスタート、小説家のたまご・きららちゃんの冒険物語です。きららちゃんは、無事小説家になれるのか? お楽しみに!
 そして「きらら通信」もリニューアル。きらら編集部には、年齢性別様々な編集者が在籍しています。スタッフたちが、日頃感じていること、巷で見つけた面白いネタ、担当作品のPRなどを書き綴っていく予定です。こちらもよろしくお願いします。(H)

久しぶりにスタジアムでサッカー観戦をした。10年以上振りになるのだろうか。贔屓チームの試合でなかったこともあり、お互いの好プレーに拍手を送ることができた。今度は大声を出してみたい。(ひ)

最果タヒさんの最新詩集『夜空はいつでも最高密度の青色だ』が、石井裕也監督の手で映画化されました。彼女の詩の行間に潜む物語まで掬い上げた傑作です。5月13日先行公開。ぜひ映画館へ。(K)

編集部の仕事机に植木鉢を置いている。緑いろの葉が元気にのびるこの植物の名前は不明(人から譲り受けたものなので)。本日、桃いろをした小さなつぼみを1つ発見。連休中の水やりはどうする?(お)

作家の方に勧められ、お笑い芸人が出演する劇場へ初めて足を踏み入れた。テレビで見ていた芸人たちの汗や鼻息が顔にかかるような近さで、彼らの過酷な闘いの日々を、拝みたい気持ちになった。(m)

2017年5月号 【156】

 きらら通信を、絵で描いてください。と言われたら、今よりずっと大変だったに違いない。そう自分に言い聞かせながら、今月も締め切りギリギリになって原稿と向き合う。

 文章を書く以上に、絵を描くのが苦手だ。

 小学3年生の図工の時間。友達の顔を描くというよくある課題が出た。どう手を付けていいかわからなかった私に、先生が優しく教え諭す。「良いところを強調してあげてください」。鼻の形の美しい女の子だった。まずは画用紙に鼻の穴を描き始める。力を込めて丁寧に。仕上がりが待ちきれぬ彼女が、私の画用紙を覗き込んだ。その瞬間、彼女の表情は凍り付き、みるみるうちに目が潤み始めた。先生が慌てて駆けつける。絵を描いてはいけない人間がいると知った8歳の秋。それ以来、絵を描くことが恐ろしくなった。文章も苦手だが、それでも五十音や知ってる言葉を組み合わせればどうにか形になるだけましだ。

 だから西加奈子さんが、小説家としても超一流なのに、きららの表紙用にすばらしいイラストを仕上げてくださるのには、毎号驚かされる。いったいどういう脳の構造をしているのか。そんな西さんが今号の表紙で描いたイラストが『脳』。脳を描こうと思う着想自体が、常人の発想を超えてくる。表紙に描かれた美しく整った、やわらかそうで、何にでも染まりそうで、でも染まらない血色の良い潔い脳。西さんの自脳像か。この方の脳からあふれ出てくる言葉やイラストに、心を鷲づかみにされ、受け取る側の脳にじわじわと作用してくる。

 きららの小説の扉絵を描くイラストレーターの方々。白い紙に立体を生み出し、物語に勢いを添えてくれる。西村ツチカさんは大人気のイラストレーターであると同時にビッグコミックで連載中の漫画家。りんたろうさんは、アニメの監督として世界中に名を轟かせる。茂苅恵さん、西淑さん、真々田ことりさん、斉藤知子さん、浅妻健司さん、浦上和久さん、柳智之さん。イラストを最初のページから見ていくと、さながら小さな美術館。絵を描く脳力に心から憧れ尊敬の念を抱く。

 毎号素敵な表紙イラストを描いてくださっていた西加奈子さんは、今号が最終回。次号からは、御年79歳、脳年齢は間違いなく永遠の20歳、田村セツコさんに引き継がれます。お楽しみに。

(H)

2017年4月号 【155】

 青山七恵さんの『ハッチとマーロウ』が最終回を迎えた。「ママは大人を卒業します」というインパクトのある台詞から始まったこの物語は、小学5年生の双子ハッチとマーロウの想像力と冒険心に、読んでいるこちらの気持ちもハッピーにさせられる作品だ。最終回の校了、ハッチとマーロウの成長譚で爽やかに幕を閉じることを予想して読み進める。あれ? 突如、涙腺が決壊。青山先生、まさかの展開です。校了、というのは、編集部から印刷所に原稿を渡す前の最終段階の行程。誤字脱字はないか、表現に問題がないか等を確認する作業を言う。涙腺を引き締め実務を全うしなくては。仕事中に号泣するわけにはいかないので、物語を読んで涙が溢れそうな時は舌を歯で強く噛むという手法を編集者になってから編み出した。笑い出しそうになった時も舌を噛む。流血すると騒ぎになるので、ほどほどの力で。わたしの喜怒哀楽は舌先三寸(全く意味は違うが)で制御できるようになった。だが、今回は、そんな小手先の舌技では対処できそうにない。トイレに駆け込み涙をぬぐう。何事もなかったように机に戻って校了を始める。が、自分のコントロールの範疇を超えていた。この会社の片隅で、原稿を読み、思い切り涙し心を落ち着ける。さあ、戻って誤字脱字を見つけよう。

 コメディーを読んでいる時も、大笑いしないよう舌と肩に力を入れる手法を使う。だが、笑いの方が勝ってしまうと、妙な破裂音が口をついて出てしまい、恥ずかしい思いをすることも。傍から見るとなんと間抜けな商売か。もっと舌を鍛えなくては。

 才能溢れる小説家が編集者の心を揺さぶり、机にいながらにしていろんな世界へ連れていってくれる。この前お会いしたテレビ局のドラマプロデューサーが、「仕事中に漫画や小説を読んでいても怒られないのが、この仕事のいいところ」と。まさしく、同意。なんのスキルも持たない編集者は、作品を読者に届ける使命があると信じて、今日も本作りにいそしむ。

 今号は、河治和香さんの新連載がはじまった。単行本『遊戯神通 伊藤若冲』が面白かったので、どんな連載になるのか、とても楽しみだ。

 5月号では、注目の作家・最果タヒさんによる新連載が開始予定。1話目を拝読しましたが、みずみずしい感性にぐいぐい引き込まれながら読了。次号もお楽しみに。

(H)

2017年3月号 【154】

 今号より「きらら通信」を引き継ぐことになりました。

 と、書いたきり締め切りをすぎてしまった。

 今日こそは、と万難を排して机に向かうこと二十分。何も降りてこない(まるで大作家のような物言いに我ながら苦笑……)。気分転換に、書店をふらついて良い本に出会えれば、創作意欲がかき立てられるかもしれない。神保町に繰り出し、一冊の本を購入。さすが三浦しをんさん、面白い! この勢いを借りて今なら書き上げられるかもしれない、珠玉の「きらら通信」。興奮さめやらぬ気持ちで編集部に戻る。……ダメだ。文体が三浦しをんさんになってしまう(いや、なってない、絶対なれるはずがない)。

 行き詰まってしまった。一度神保町から離れよう。電車で二駅、三越前に到着。人は、ストレスが極限に達すると物欲で心を満たそうとしてしまうのか。勢いで不必要な物を買ってしまいそうになる自分を押しとどめ、千疋屋で二千七百円のメロンパフェを食す。甘い物を食べると脳みそが働くというし、合理的な選択だったか、ひらめいた気がする。編集部に急ぎ戻る。しかし、電車に乗っているうちに脳内の糖分が分解されてしまったようだ。思いついたはずの秀逸なきらら通信が、見事に記憶から消え去る。もうすぐ十七時。書籍代、パフェ代、交通費、有閑マダムでもないのに四時間で五千円近くを散財し、あげく1ミリも進んでいない。毎月こんなことをし続けるのだろうか。誰が、こんな私を編集長にしたのか。会社は、よっぽど余裕があるのか、やけくそなのか。千文字の原稿で逃げまどい街をさまよう私。ゼロから物語を紡ぐ小説家の底知れぬ力に改めて驚愕する。

 原点に立ち戻ろう。「きらら」を過去の号に遡って精読する。双子の成長、かわいいコアラ、破天荒なミュージシャンに、激動の時代を生きた産婦人科医、壮大なラブロマンス、不思議な屋上遊園、小説の書き方、優しく愛すべきぽんこつたちのドラマ、個性豊かな猫たちの生態、書店員さんのホットな声、凄腕の書評家による本の案内! きら星のような執筆陣に支えられたこの一冊の文芸誌「きらら」。キリキリしていた私が、キラキラした気持ちに包まれる。この雑誌の編集ができる幸せを噛みしめる。やけくそ人事なんて言ってすみません。

 これからも「きらら」は続きます。今後もご愛読よろしくお願い申し上げます。

(H)

2017年2月号 【153】

 実家に所用があり、昔読んでいた本が並んでいる本棚を眺めていた。ふとそのなかから、何気なくとった一冊の絵本に途端に引き寄せられる。「たけしのえんそく」。征矢清・作、石鍋芙佐子・絵。福音館書店発行。月刊予約絵本「こどものとも」194号。1972年5月1日発行、とある。物語はこうだ。幼稚園の遠足で、主人公のたけしは、バスに乗って「はちぶせやま」へ向かう。仲良しの犬、しろはお留守番である。先生が許してくれなかったからだ。なのに、しろはバスにこっそり乗ってしまう。当然すぐに先生にばれる。しょんぼりするしろ。バスを降りてからは、みんなの後ろをついて歩く。そのうち、たけしは、しろが林のなかに駆け込んでいくを見てしまう。気が気でないたけし。しばらくして、何かが林のなかでちらっと動くのが目に入る。いてもたってもいられず、たけしはひとりの野に分け入っていく──。

 ショックだった。ストーリーはまったく覚えていないし、絵もうっすらとしか記憶にない。でも、間違いなく、昔何度も読んだ手応えだけは残っている。この項でも書いたことがある人生の古い記憶ベスト3(宇宙人にさらわれそうになった記憶と、誤って弟をローカル線のホームから突き落としてしまった記憶のあいだあたりか)くらいの時期の出来事だけに、まあ、覚えていなくても仕方がないのかもしれない。そんな風に思い直しながらページをめくり続けていた時、目の前に、文字通り、犬のしろが飛び込んできた。森のなかで迷い子になっていた主人公のたけしと同じ気持ちで、「あ、いた!」と心のなかで叫んでしまう。しろの、不安そうななかにも、ちょっとはにかんだような無邪気な瞳は完全に見覚えのあるものだった。結局、覚えていたのは、この一枚の絵だけだった。でも、何気なく絵本を手に取っていなければ、このしろい犬を記憶の奥底から救い出すことはできなかったし、なにより、なぜだか幼少期の自分に出会えたような気にすらなれたのである。かなり感傷的な感じのお話になってしまったが、むかし読んだ一冊の絵本は、その時の空気感のようなものまで真空状態で保存してくれる好例のように思えた。

(U)

※今月号をもって編集長の任を終えることになりました。約5年半にわたり、どうもありがとうございました。来月号以降も、変わらずご愛読下さいますよう、どうかよろしくお願い致します。

2017年1月号 【152】

 最初に断っておくが、今月は相当間の抜けたことを書くことになりそうだ(でも、かなりのインパクトを受けたことも間違いない!)。先日、テレビの再放送を見るともなしに見ていたら、80年代大映ドラマ「ヤヌスの鏡」をやっていた。大映ドラマがなんなのかとか、ここで丁寧に説明しているスペースはないような気もするが、この時代に生きていたひとは、即座に葛城ユキのハスキーな声の主題歌(原曲は、確か米映画「フットルース」のなかの一曲だった)や、自らをドジでのろまな亀だと自虐的にいいつのる熱血スポ根テイストのCAの物語とか、いろんなフラグメントが瞬時に脳内を駆け巡ることだろう。「ヤヌスの鏡」は、大映テイストあふれる熱量の高い演出で、あることを契機に人格が変貌してしまう主人公(昼は優等生の女子高生、夜は札付きの不良)を杉浦幸が演じている。

 さて、前置きが長くなってしまったが、冒頭にのべた吃驚したことというのは、女子生徒たちの会話のシーンである。「○○なのよ」「○○だわ」といった、昨今の日常会話ではおそらくオネエ系の方々しか使わないような気もする女性の一般的な言葉遣いが、このドラマの放送時期である80年代半ばにはまだ流通していたことがよくわかる(同時に、「やっちまいな!」「このズベ公! あたいのダチになんてことするんだい!」的ないわゆるスケバンテイストな言葉にもまだまだ現役感があったようだ)。

 いったい、いつ、どのように、こうした言葉遣いというか、特徴的な語尾が衰退していったのかは正直よくわからないが、時間が経つにつれ、だんだん男女の性差のようなものを言葉遣い自体から推し量ることが間違いなく難しくなってきている気がする。一方で小説のほうはどうなのだろう。まだまだ会話のなかでの女性登場人物の語尾として、場合によってはリアルなものとして採用されていることがあったりするように思う。

 いま、リアルと書いたが、小説自体の要請によって、その言葉遣いがリアルなものとして響いている場合があるのだろう。またしても、ここでよく書いてきた「本当」と「本当らしさ」の話になってしまったが、とはいえ、いずれ、完全に「○○なの」が小説内会話から完全になくなってしまう日もあるのかもしれない。そう考えてみると、小説もまた、時間を呼吸して生きているように思えてならない。

(U)

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