☆スペシャル対談☆ 角田光代 × 西加奈子 [字のないはがき]と向きあうということ。vol. 4

☆スペシャル対談☆ 角田光代 × 西加奈子  [字のないはがき]と向きあうということ。vol. 4
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vol.4  しずかに。

 

角田
西さんの本で、西さんご自身が、装丁の絵を描いていない本もあるんですか?
 

西
あります。でも20作近く出してるけど、3~4冊ぐらいだと思います、自分の絵じゃないやつは。恥ずかしいですけど、そういう自分が。どんだけ〝自分〟やねん、て思うんやけど、もうなおらんし、そういう作家がいてもええやんていう甘えもあったりして。
もちろん、向田邦子さんも角田光代さんも、むちゃくちゃ大先輩で……。
 

角田
わたしは、そんなに「大」ではない!
 

西
大・先輩ですよ!!! 

西加奈子さん


角田
「小」ぐらいだと思う。
 

西
そろそろ言ってくれないと、ほんまにうちらが偉そうにできないですよ(笑)。
向田邦子さんも角田光代さんも、もちろん、すごい先輩やけど、おこがましくも、おなじ作家ではあると思ってるところも、わたしにはあります。ジョン・アーヴィングかておなじ作家やと思っています。いろんな本があるなかで、値段もね、文芸とかすごい平等で、向田邦子さんの本だから8000円です、とかないじゃないですか。画家はあるのに。
角田さんとわたしの本、だいたい束がいっしょやったら、値段はだいたい千ナンボやし、本屋行ったら、あいうえお順やし、すごい平等なジャンルでやらせてもらってるんやから、それやったらほんまに自由にやろうって思える。いいジャンルやと思える。
 

角田
うーん。
 

西
CDもそうか? CDもだいたいいっしょですね。
 

角田
いっしょですね、うん。
 

西
平等ですね、そこもね。ライヴのお金もちゃうのかな?
 

角田
ちがう。
 

西
ライヴはちがうんか、そっかそっか。それ、ないですもんね、あんまり作家って。
 

角田
うん、ないね。
 

西
ね、ぜんぜん規制もないし。いいジャンルです。
 

角田
………………。
 

西
………………。
 

角田
なにか話題を……(笑)。
 

司会
いまわたしたちが生活してるなかで、戦争って遠い存在に思えるんですが、この絵本『字のないはがき』に携わっているあいだ、ご自身と戦争の距離感はどうでしたか?
 

角田
戦争の話ではあるんですけれども、わたしは、ことさら戦争を強調したくはなかったんですよね。向田邦子さんの書き方っていうのは、戦争というものを、大上段に構えないで、大きな意味としてとらえないで、自分のいる日常から書いていく書き方をしているなぁと思います。「字のない葉書」は、子どもの目線から見える戦争の一部、が書かれていると思っていて、絵本の文章を書くにあたり、そこは注意しました。戦争ってこういうものですよ、と書き加えたりしちゃうと、子どもが読むのも嫌になるだろうなぁと気をつけて、〝戦争のにおい〟は、そんなに出ていないと思っています。

角田光代さん


西
日常が脅かされることが戦争やから、日常のことをちゃんと描く。あのこわいお父さんが泣いたとか、まずそういうことやと思うんですよね。で、お父さんがなんで泣いたかっていうと、戦争が原因で、という〝矢印〟があって、まず戦争があって、戦争から〝矢印〟来てるわけじゃない感じは、すごいありましたね。
若いころは、恋愛と似てて、自分のなかに発火装置みたいなのがあって、そこから出てきたものを書いてましたけど、それがなくなってきたとき、どこに目が行くかっていえば、角田さんもむかしおっしゃっていた、新聞とかニュースです。そのニュースにまつわる雰囲気とかが気になって書くんですけど、たとえば核爆弾の例でいったら、あるひとりのひとがそのスイッチを押すまで、を書くっていったら変ですけど、そのひとも日常を生きてきたわけだから、最初からスイッチを押すやつとして生まれたわけでもないし、とか。
そういう〝矢印〟のむかい方が、自分のなかでは決まってきた。それをこの絵本がまた強固にしてくれた感覚はあります。戦争って、ふつうの人間が死ぬことやし、ふつうの人間が行くことやし、そういうことやと思います。

西加奈子さん


司会
『字のないはがき』は、おふたりともおなじ方向、目線をもって取り組まれた作品ということですか?
 

西
あ、でも、逆があっていいですよね。「戦争、これだあああ!!!」っていう、ハリウッド超大作みたいなやつ。あれは必要やと思うし、でも、ぜんぶそれでもあかんし、ぜんぶこれでもあかんし。いろんなアプローチで、っていうのはどうですか?
 

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◇自著を語る◇ 角田光代『字のないはがき』

子ども時代に見ていたテレビドラマをのぞけば、向田邦子作品に出会ったのは二十二、三歳のころだ。このときすでにご本人はこの世の住人ではなかった、ということもあって、この作家は私には最初からものすごく遠い存在だった。平明、簡素でありながら、叙情的な文章で綴られる、暮らしや記憶の断片は、私の知らない大人の女性の世界だった。