スピリチュアル探偵 第11回

スピリチュアル探偵 第11回
探偵からの提案。
観光のついでに、
霊能者を訪ねてみては?

 本物の霊能者を求めて全国をめぐっている僕ですが、この活動、旅のスパイスとしてもなかなかオツなものです。

 観光地を見物し、旨い地酒を堪能するついでと割り切ってしまえば、たとえ遠路はるばる訪ねた相手が「ど」の付くインチキであったとしても、まあご愛嬌。まして、それなりにイイ線いってる霊能者に会えようものなら、忘れられない思い出となるでしょう。

 実際、これまでにお会いした霊能者(もちろん自称を含む)には、どこかしらの地方で直撃した人が少なくありません。たとえば3年前の春に宮崎県を訪れた際には、とりわけスピリチュアルな邂逅が重なり、1泊2日の小旅行が期せずして大充実の旅になりました。

 やはり、欲する者のアンテナには求める情報が引っかかるようにできている。今回は、あらためてそう実感させられた2日間の回顧録をお届けします。

〈CASE.11〉思いがけない出会いが続々!? 宮崎ツアー回顧録

 宮崎県といえば、かつては新婚旅行のメッカとして栄え(といっても半世紀前の話らしいですが)、プロ野球チームがキャンプを張るなど、何かと話題の多い地域。スピリチュアル的には天孫降臨の地である高千穂峡も有名ですね。

 以前、どげんかせんといかん知事のインタビューで県庁を訪ねた際には、「宮崎はサーフィンもスキーもできる全国でも珍しい場所なんです!」と熱烈アピールされたものですが、確かに見どころに事欠かない土地柄ではあります。

 しかし、その日の僕のお目当ては海でもゲレンデでもなく、「関之尾の滝」という景勝地でした。大滝・男滝・女滝という大小3つの滝からなる、「日本の滝100選」にも指定されている名瀑です。

 ところがこの滝、地元では心霊スポットとして名を馳せており、一昔前には自殺の名所として身を投げる人が後を絶たなかったとか……。試しに検索してみると、たしかにネット上にはその手の話題があふれんばかり。やれ「シャッターを押せば必ず霊が写る場所がある」だの、「トイレで首吊り自殺が発生した」だの、マイナスイオンを吹き飛ばすような情報がわんさかヒットします。

 中には「絶対に行ってはいけない」と警告するサイトまであり、物好きな僕もさすがにちょっと怯みましたが、これは遊びではありません。この時、僕は某社の仕事で全国のミステリースポットをまわっており、その取材リストの中に関之尾の滝があったのです。

滝壺に朱塗りの盃が浮かぶ……? 現地に残る怖い話

 といっても、何もおどろおどろしい真夜中に訪れたわけではありません。むしろその日は気持のいい小春日和で、午前のうちに宮崎空港に降り立った僕は、あらかじめ協力を要請していた現地の友人の車に乗って、関之尾の滝へと向かいました。

 所要時間は空港から小一時間程度。駐車場に車を停め、順路に沿って歩いていくとすぐに雄大な滝が見られます。緑に囲まれたダイナミックな景観からは、物々しさなど一切感じられません。トレッキング客の姿もちらほら見られ、ただただ爽やかなスポットです。

 では、なぜここが心霊スポット扱いされているのかというと、これはおそらく、この滝に残された伝説に理由があるのでしょう。

 今からおよそ650年前、都城島津家の殿様がここで月見の宴を催した時のこと。殿様はお雪という美貌の腰元を見初め、酌をさせました。ところが、緊張のあまり手元を狂わせたお雪は、あろうことか酒を殿様の着物にこぼしてしまいます。

 この失態に責任を感じたお雪は、死んで詫びようと、朱塗りの杯を手にしたまま滝壺に飛び込んだ──というのが言い伝えのあらまし。それ以来、名月の晩になると滝壺に朱塗りの杯が浮かぶと言われ、お雪の悔恨の念が今なお強く残っていると信じられているのです。

 これが単なる怪談話に終わらないのは、今も滝壺付近の岸壁に、こんな歌が刻まれているからです。

「書きおくも
形見となれや
筆のあと
又あうときの
しるしなるらん」

 これは死んだお雪の恋人が当時、悲しみのあまり槍の穂先で刻んだものなのだとか。怖いんだかロマンチックなんだか判断に迷う部分もありますが、こうしたエピソードが尾ひれを纏えば、数々の怪談が生まれるのも納得してしまいます。

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友清 哲(ともきよ・さとし)

1974年、神奈川県生まれ。フリーライター。近年はルポルタージュを中心に著述を展開中。主な著書に『この場所だけが知っている 消えた日本史の謎』(光文社知恵の森文庫)、『一度は行きたい戦争遺跡』(PHP文庫)、『物語で知る日本酒と酒蔵』『日本クラフトビール紀行』(ともにイースト新書Q)、『作家になる技術』(扶桑社文庫)ほか。