ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第38回

ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第38回
最近の漫画業界の
餓死スピードは速い。
どう考えるべきなのか。

前回、前々回と「単行本の売上が悪くて連載を打ち切られそうになった」という、漫画家の将来なりたいものランキング順位をさらに下げるようなことしか言っていないが、むしろ未来あるお子様に「漫画家」なる有害職業がこの世に存在するということを気づかれないようこれからも尽力していきたいと思う所存だ。

有害というのは、もちろん「己の人生に害」という意味である。

漫画も漫画家という職業も悪くはないのだが「おススメできない度」は昔よりさらに上がってきていると感じる。
漫画家というのは、人気があれば一攫千金だが、なければ速やかに仕事を切られ、水木しげる御大の大好きな言葉をお借りするならば「これは餓死ですよ」になってしまう。

他の仕事に就こうにも「漫画を描いていた」など、一般企業では言わない方がマシなレベルの経歴なので、履歴書に謎の空欄ができてしまい、この間何をしていたのかと問われたら「虚空を見つめていた」と答えるしかなく、どちらにしてもご多幸をお祈りされて終わってしまう。

漫画が描けるというスキルは漫画家という職業でしか生かせないため、漫画家として食っていけなければ人生自体が詰んでしまう場合が多い。
最近の若者は堅実なので、「バクマン。」の蒼樹先生のように漫画家がダメだった時のために教員免許を取っておくなどつぶしを用意している人もいるのかもしれないが、だったら何故最初から教員にならず漫画家になってしまうのか。スキルがあっても判断力が致命的に欠けているのでどちらにしてもダメだと思う。

しかし、漫画家は売れなきゃ餓死というのはそれこそ水木先生の時代から言われていることなので、今更と思うだろうが、最近の漫画業界は「餓死スピードが速くなっている」気がしてならない。

前々回から「2巻で打ち切られそうになった」と言っているが、今までは本当に売れてなくても3巻ぐらいまで続いたものである。
それが、コロナという、無視できない影響があったにもかかわらず、即次巻で終われという判断が出てしまうということは「見切る速度が上がっている」としか言いようがない。

もしくは「俺を切る速度が上がっている」ということだ。
もしそうだとしたら、1秒でも早く「冗談じゃない! こんなところにいられるか!」と推理小説で2番目に殺される人のムーブで業界から去るべきだと思うのだが、前述の通り他に行くところもないので結局餓死体で発見されることになる、もはや他殺ですらない。

よってもはや漫画というのは「2巻目から面白くなる」ではダメなのである。

仮に2巻目からムチャクチャ面白くなるとしても、1巻が売れてない時点で、2巻終了が決められてしまったりするので、ムチャクチャ面白い展開の代わりに、ハチャメチャな最終回を描くしかなくなっているのだ。

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カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。