ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第12回

ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第12回
古から続く作家と出版社との戦いも、
ついにここまで来たか。

詳しい経緯は怖くて見ていないのだが、簡単に言うと、出版社側の人間が、自社から出した作家の本の部数と実売数をツイッターで暴露してしまう、ということがあったようだ。

本人がどういう意図でそれを言ったかは置いておいて、傍から見ると「デカい事を言ってますけど、こいつの本全然売れてないっすから」という晒し行為に見えてしまう。

古から続く、作家と出版社との戦いも、ついにここまで来たか、という感じである。
出版社側がそんな禁じ手を使うというなら、今後作家には銃の所持を認めるべきである。

このように、作家の多くが「ヤロウ…タブー中のタブーに触れやがった……」と本部以蔵の顔になるぐらい本件は衝撃的な事だったのだ。

読者の皆様が平素目にする本の部数というのは、大体「100万部突破!」みたいな景気の良い数字だけだと思う。
「1巻8000部で発売中! 2巻が出るかどうかは未定!」みたいなしょっぱい数字は見たことがないはずだ。
そういう時は大体「好評発売中」という文字に置き換えられる。
これならたとえ3人しか買っていなくても、その3人に好評なら嘘ではないので、JAROに訴えられることもない。

このように、売れている時はバンバン数字を出すが、売れていない時は黙っている、というのが暗黙の了解だったのだ。

何故なら「売れていない」というイメージがつくことは誰にも得がないからだ。
もちろん、売れていない=面白くない、ということではない。
しかし「売れている」というのは、それだけで「面白そう」ということにはなるのだ。

よく商品に「売れてます!」というキャッチがついているのを目にすると思うが、冷静に考えると、あれは何も言っていない。
何故売れているのか、どこが良くて売れているのか、一切情報がないのだ。

しかしそんな虚無の如きキャッチでも我々は「売れてるなら買ってみるか」と思ってしまうのである。
つまり、数字がデカいというのは、内容関係なく、それのみで高い宣伝効果があるということだ。

逆に言うと、部数や実売数が小さいというのは、それだけでマイナスイメージになるということである。
いわば「チンチンが小さいです」と暴露されてしまったようなものなのだ。

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カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。