小説家にとって腕の見せ所と言われているのが、食の描写です。
 池波正太郎『鬼平犯科帳』の魅力は数多くありますが、作中に出てくる食べ物があまりに美味しそうであることも、その一つであることは間違いありません。
 また、どんな小説を読みたいか30代~50代の女性(本を買って読む習慣のある主要層)にアンケートすると、「食にまつわるお話」とこたえる方の比率は非常に高くなっています。
 今も昔も“食小説”には一定以上のニーズがあります。

 このたび、食の描写に秀でたフィクションの書き手の発掘を目的として、「日本おいしい小説大賞」を創設いたします。
 選考委員には、直木賞作家の山本一力氏(食の代表作は『銀しゃり』『だいこん』)、作家の柏井壽氏(食の代表作は連続ドラマ化された「鴨川食堂」シリーズ)、放送作家・脚本家の小山薫堂氏(伝説のテレビ番組「料理の鉄人」構成)をお迎えしました。

山本一力(やまもと・いちりき)●1948年高知県生まれ。東京都立世田谷工業高校電子科卒。97年『蒼龍』で第78回オール讀物新人賞を受賞しデビュー。2002年『あかね空』で第126回直木賞を受賞。著書に『大川わたり』『損料屋喜八郎始末控え』『銀しゃり』『だいこん』『ジョン・マン』『竜馬奔る』『長兵衛天眼帳』『後家殺し』など多数。

柏井壽(かしわい・ひさし)●1952年京都府生まれ。テレビ番組や雑誌の京都特集で監修をつとめる。エッセイ作品に『極みの京都』『日本百名宿』『ぶらり京都しあわせ歩き』『グルメぎらい』など多数。小説作品に『鴨川食堂』『鴨川食堂おかわり』『鴨川食堂いつもの』『鴨川食堂おまかせ』『鴨川食堂はんなり』『鴨川食堂もてなし』『海近旅館』『京都スタアホテル』などがある。

1964年熊本県生まれ。日本大学藝術学部放送学科卒。放送作家。「料理の鉄人」(95年)「トリセツ」(2003年)は国際エミー賞に入賞。08年公開の映画「おくりびと」で 第60回読売文学賞戯曲・シナリオ部門賞、第32回日本アカデミー賞最優秀脚本賞、第81回米アカデミー賞外国語部門賞を獲得。