額賀 澪『タスキメシ 箱根』

物語が現実を追いかける──箱根駅伝予選会を終えて


 今しがた、箱根駅伝の予選会が終わった。興奮冷めやらぬ中、このエッセイを書いている。

 4年前の2015年秋。作家デビューしてまだ5ヶ月という頃に、駅伝を題材にした『タスキメシ』を刊行した。まさか4年後に続編を書くことになろうとは、当時全く考えていなかった。

 続編というのは難しい。特に、前作を1冊で完結させるつもりで書いていると、下手をすると蛇足になりかねない。ところが、箱根駅伝誕生100周年と東京オリンピック開催に合わせて続編を、という企画が持ち上がった際、不思議と抵抗感なく「書こう」と思えた。

 前作では高校生・大学生だった主人公が、社会人となり、再び大学駅伝の世界に戻ってくる。そんな物語を考えたとき、主人公をどんな大学の陸上部に所属させるか悩んだ。ちょうどその頃、筑波大学陸上競技部がクラウドファンディングで強化費用の寄付を募っているのを知った。筑波大学の前身である東京高等師範学校は第1回箱根駅伝の優勝校。大河ドラマ『いだてん』に登場する金栗四三の母校でもある。もちろん、目標は「箱根駅伝復活」だ。

 強化資金の潤沢な強豪の私立大学と、国立大学である筑波大学とでは、練習環境や支援体制に大きな差がある。

「質の高い練習ができる環境を整えてやりたい」

「頑張った分だけ〝力になる〟栄養サポート体制を敷いてあげたい」

「磨り減ったシューズを履いて故障を招いている姿を見たくない」

 弘山勉監督がそのように語っていたのを目にしたとき、管理栄養士である主人公に「駅伝部の栄養サポートをしてほしい」と頼み込む国立大学駅伝部の監督、というシーンが思い浮かんだ。

 せっかくだから大学そのものも筑波大学をモデルにしてみようと、茨城県内の学園都市に広大な敷地を有する国立大学を舞台にし、筑波山の別名「紫峰」から「紫峰大学」と名付けた。襷やユニフォームの色は紫だ。

 あとはトントン拍子に話が展開していく。一文目を書き始めてから「おわり」とエンドマークを打つまではあっという間だった。

 その筑波大学が今年、箱根駅伝予選会を6位通過した。2020年のお正月、箱根駅伝を筑波大学の選手達が走る。面白いことに、『タスキメシ 箱根』で主人公達が目指すのも、2020年の箱根駅伝出場だ。筑波大学の選手達が走った予選会を、紫峰大学の選手達も駆け抜ける。物語(フィクション)が現実(リアル)を追いかけるような形になった。

 筑波大学と同じように、紫峰大学も箱根駅伝に出場できるのか。はたまた全く違う結末が待ち受けているのか。気になる方は、ぜひ『タスキメシ 箱根』を手に取って確かめてほしい。

額賀 澪(ぬかが・みお)

1990年、茨城県生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒。2015年に、『ヒトリコ』で第16回小学館文庫小説賞を、『屋上のウインドノーツ』で第22回松本清張賞を受賞しデビュー。2016年、『タスキメシ』が第62回青少年読書感想文全国コンクールの課題図書(高等学校部門)に選ばれベストセラーに。その他の著書に『さよならクリームソーダ』『君はレフティ』『ウズタマ』『完パケ!』『拝啓、本が売れません』『風に恋う』『イシイカナコが笑うなら』『夏なんてもういらない』『競歩王』など。