中濵ひびき『アップルと月の光とテイラーの選択』

 著者の中濵ひびきさんは、幼少期をイギリスで過ごし英語を母語とするため、本作『アップルと月の光とテイラーの選択』の原稿は英語で執筆しています。現在は日本の私立高校に通う2年生。「大学生になるまでは静かに過ごしたい」という本人の希望から、本名や姿を公表することは控えていますが、今回、本作に込めた思いと読者へのメッセージを綴ってくれました。



 まずは、皆川さん、菅原さん、横山さん、この本を翻訳してくださった竹内さん、カバーイラストを描いてくださった牧野さん、そして、物語を書くよう薦めてくれた、わたしの先生で友人でもある西村先生に、感謝の気持ちを伝えたいです。

 それから、いつも助けてくれるママと姉にも。

 いま、最高の気分です! どうもありがとうございました。

テイラーとわたしの冒険

 小学館の出版局で編集長にはじめてお会いしたとき、「どんな小説が好きなの?」と聞かれました。

 わたしは「冒険ものや、わくわくするもの。スピリチュアルなものとか、世界を舞台にした物語が好きです」と答えました。

 すると編集長は、こう言いました。「じゃあ、そういう要素がぜんぶ入った小説を書いてみたら? きみがこれまで書いたことのないような、とても長い小説を」

 あれは、2017年の春のことでした。テイラーとわたしの冒険は、あのときはじまったのです。

 それからしばらくは何もしないで、いいアイデアが自然に浮かぶのを待ちました。

 

 どうやらわたしは、夢のなかで母なる地球の声を聴いたみたいです。その声が、アップルとテイラーの旅へと続く扉を開いてくれました。

 わたしは目を覚ましました。そういうアイデアはいつも夢のなかに出てきます。だから、忘れないように、起きたらすぐに書きとめるのです。

 

 学校で毎日、科学や政治についてのショッキングでびっくりするような記事を読んでいたからか、ある日、この地球上で何かよくないことが大規模に進行しているのではないかと思いました。ふとそう感じたのです。「第六感」みたいなものです。それに、政治のさまざまな問題が、ひどくうさんくさいものだ、と感じました。世界の政治の表舞台に登場するのは、権力の座についた大国の政治家たち。わたしは観客としてそれを見ていますが、舞台に立つ役者たちに拍手を送ることはできません。舞台上のドラマの展開が速すぎて、息つくひまがないのです。第一次世界大戦や第二次世界大戦当時は、きっとだれもがわたしみたいに感じていたのでしょう。

 それに、いまの時代は科学技術や技術革新がどんなものか、慎重に見極めなければなりません。わたしは昔ながらの素朴なライフスタイルも大切にすべきだと思います。

 スウェーデンのある少女が地球温暖化の危険性を訴えるために、座り込みの抗議をしたことはご存じでしょうか?

 彼女の行動に刺激されて、イギリスやフランスなどヨーロッパの国々で若者による座り込みの抗議運動が広がりました。この運動の発端となったスウェーデンの女の子はたった15歳でした。

中濵ひびき(なかはま・ひびき)

2002年5月生まれ。3歳から9歳までをロンドンで過ごし、英語を母語とする。11歳のときに英文で書き翻訳サイトで翻訳した小説『ジョージとジョセフィーンとフィービィースペンサースミスそして彼らの庭と冒険』で第8回「12歳の文学賞」大賞を受賞。翌年は『ベッティさんは何を見たのか? 愛、運命、信頼と裏切り、そして強くなること、死ぬほど辛い事が人を強くする。』『うさぎの瞳』の2作を同時に応募し、共に優秀賞を受賞。2019年に初の長篇書き下ろし『アップルと月の光とテイラーの選択』を刊行。