本当に怖い! 幽霊が出てくる小説

現世に未練や執念、後悔を残して彷徨う怨霊を鎮めるための方法、あります。
書店員名前
宮脇書店本店(香川) 山岡江梨子さん

 まずは、出てくる幽霊がとにかく怖すぎる黒史郎幽霊詐欺師ミチヲ』。

黒史郎『幽霊詐欺師ミチヲ』
角川ホラー文庫

 結婚詐欺によって全てを失い命を絶とうとした主人公を救ったのは一匹の犬と黒いスーツ姿の男。カタリと名乗るその男が持ちかけてきた儲け話は幽霊を口説き落として、生前に残した財産の全てを手に入れる事だった!

 かくして幽霊を相手に結婚詐欺をするはめになったミチヲ。最初のターゲット、キリシママミコと逢瀬を重ねるミチヲだが……。

 とにかく、幽霊の描写が結構スプラッタでえぐいので、ひえっ、となります。

 ミチヲがお人好しで、泣き虫で、でも根性があるいいヤツで読みながら彼の幸せを願わずにはいられません。果たして、幽霊と心を通わせることになったミチヲは何を失い、何を得るのか……。

 こちらの主人公はのっけから呪われている。中村ふみ夜見師』。

中村ふみ『夜見師』
角川ホラー文庫

 二十一歳の五明輝は曽祖父の代から始まったという正体不明の呪いのせいで余命が三年ほど。破格のバイト代で住み込みの家政夫として雇われた輝は屋敷の主、多々良を手伝って箱に封じられた怨霊と対峙することになる。その箱を開けると封じられた怨霊の過去が再現されるのだが、それはつまり、ごく普通の人間が怨霊に至る悲劇を目の当たりにすることで……。ハンサムだが偏屈な多々良と、元気で頑張りやの輝が紆余曲折ありながらも相棒となっていくのが素敵です。輝の呪いは解けるのか? そしてその呪いの原因とは?

 隠れ鬼は誰もが幼い頃に遊んだことがあるだろうが、その遊びが禁忌になっているのは内藤了鬼の蔵 よろず建物因縁帳』。

内藤了『鬼の蔵 よろず建物因縁帳』
講談社タイガ

 大手広告代理店勤務の高沢春菜が仕事で係わることになった蒼具家には薄気味悪い怪異が待っていた。土蔵の扉に人血で書かれた「鬼」という文字。口のない死体。オクラサマと呼ばれる屋敷神……。

 カミガエシの期間は決して隠れ鬼をしてはいけない……。

──もーう、いーい、かーい……

──みーい……つぅけ……たぁー……──

 隠温羅流曳き家師、仙龍と春菜は悲しみが連鎖して生まれた因習を、因縁を、断ち切る事ができるのか?

〈「きらら」2018年12月号掲載〉
今月のイチオシ本【歴史・時代小説】
連載対談 中島京子の「扉をあけたら」 ゲスト:小島毅(東京大学大学院教授)