◎編集者コラム◎ 『セイレーンの懺悔』中山七里

◎編集者コラム◎

『セイレーンの懺悔』中山七里


セイレーンの懺悔_色校

 報道の世界を舞台にした中山七里さんの社会派ミステリー『セイレーンの懺悔』。文芸誌「きらら」での連載時から、〝ドラマ化不可能〟と言われていた本作ですが、10月にWOWOWにてドラマ化されることが決定しました。

 帝都テレビの看板番組「アフタヌーンジャパン」の記者として取材に奔走する、ヒロインの朝倉多香美を演じるのは、新木優子さん。正義感が強く真面目だけれど、事件慣れしておらず新人らしい青臭さのある多香美は、とても人間味のあるキャラクターです。過去のつらい経験から、葛藤を抱えつつ報道記者という仕事と向き合っていく多香美の成長を、小説でもドラマでも見守っていただけたらと思います。

 そして、本作の魅力のひとつは、駆け出しの未熟なヒロインを導いてくれる素敵な男性キャラクターたちの存在です。多香美とコンビを組んで取材に当たり、時に彼女を叱責しながらも羅針盤として進むべき道を示してくれる先輩の里谷太一(熱くて格好いい…!)や、「マスコミは被害者の不幸を娯楽にする怪物なのか」と厳しい批判を口にしながらも、優秀で俳優にでもなれるようなルックスをもつ宮藤刑事(クールで格好いい…!)。ドラマ版でも、里谷役と宮藤役には素晴らしい俳優がキャスティングされているので、発表を楽しみにしていただけたら幸いです。

 さらに、『セイレーンの懺悔』文庫版では、ジャーナリストの池上彰さんによる解説も必読です。「作者の中山さんは、記者経験がないだろうに、どうして作中人物に、こんなリアルな発言をさせることができるのだろうか」と、報道の世界を知り尽くした池上さんからのお墨付きをいただいた本作。「自分はこの世界で何を実現したかったのか。この言葉、私も若い頃に聞きたかった」とも池上さんが書かれているように、自分の進むべき道に迷い、悩みながら働くすべての人の心の糧になるような力強い物語です。ぜひ、お手にとっていただけたら嬉しいです。

──『セイレーンの懺悔』担当者より

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