◎編集者コラム◎

『DASPA 吉良大介』榎本憲男


スヰートポーヅ
コロナ禍の中、ひっそりと閉店した神保町の餃子の名店「スヰートポーヅ」。忘れられないこの味を、なんとか復活できないものでしょうか…


 かれこれ30年になってしまった編集者生活のなかでも、この本ほど「非常事態」な編集作業は初めてでした。入稿、校正、校了とまさに「コロナ禍」とともに進行していきました。

 思い起こせば、初稿ゲラの校正を著者の榎本憲男さんから受け取ったのは、5月上旬の吉祥寺の喫茶店。4月16日に発令された「緊急事態宣言」によって、地上から人の姿が消え、打ち合わせに向かう井の頭線の車両には自分ひとりしかいないという「ブレードランナー2049」張りのシュールな光景でした。ひっそりと静まりかえった吉祥寺のアーケード街をとぼとぼと歩きながら、そういえば、かつて同じような光景を3.11直後の銀座で一度だけ見たことがあるなぁ、としみじみ思い出していました。

 無症状感染者も多いと報道されるなかで、もし自分がそうであったらという一抹の「不安」を抱えつつ、打ち合わせは使い古して毛羽だったマスク着用というかつて経験のない奇妙なスタイルで進行し、最後にマスクの隙間から氷の溶けてしまったアイスコーヒーをストローでチューチューと一気飲みしました。

 装丁デザインも当初はビデオ通話で打ち合わせしていましたが、さすがに細かいニュアンスが伝わらず、結局はデザイナーの山田満明さんの事務所に空気除菌剤(車内用)を持ち込み、マスク着用で打ち合わせをすることに。さらに装丁用の写真をお借りした宮本敏明さんはロックダウン中のパリ在住のため、時差を考えながらスマホのビデオ通話で打ち合わせという、これまでとはまったく違うスタイルで進行しました。

「コロナ」という得体のしれないウイルスと「情報」という魔物に日々翻弄され、後手後手に回る日本政府の対応に「この国はこのままで大丈夫なのか」と呆れながら、誕生した『DASPA 吉良大介』。

「日本をバージョンアップせよ!」という惹句がぴったりの、まさにこの時代、このタイミングに、生まれるべくして生まれた作品のような気がします。

 DASPA(ダスパ)とは正式名称が国家防衛安全保障会議、英語表記 Defense And Security Projects Agency の頭文字をとった組織名の略称です。テロをはじめとした国家の非常事態に的確に対応するために内閣府に設置された各省庁からの選抜精鋭チームで、そのメンバーで長身イケメンの警察キャリア官僚である吉良大介が国家の危機に立ち向かうという痛快エンターテインメント。話題作『エアー2.0』の著者が満を持して発表する面白くて深い「大きな小説」です。人気シリーズ『巡査長 真行寺弘道』とも絡み合いながら同時進行していく新シリーズスタートに、著者から一言。「デカい話、始めます!」

──『DASPA 吉良大介』担当者より

DASPA 吉良大介