◎編集者コラム◎ 『警部ヴィスティング カタリーナ・コード』著/ヨルン・リーエル・ホルスト 訳/中谷友紀子

◎編集者コラム◎

『警部ヴィスティング カタリーナ・コード』著/ヨルン・リーエル・ホルスト 訳/中谷友紀子


『警部ヴィスティング カタリーナ・コード』編集中

 毎年10月、フランクフルトで開催されるブックフェアへ行くたびにミーティングを重ねてきたエージェント(版権代理人)の一つがサロモンソン・エージェンシーだ。スウェーデンのストックホルムに本社を置くその会社は、北欧で最も重要なエージェントの一つで、ジョー・ネスボなど著名な作家を数多く擁している。ちなみに2019年に多くの書評で取り上げていただいた歴史ミステリー『1793』(ヘレンハルメ美穂訳/小学館刊)のニクラス・ナット・オ・ダーグも、サロモンソンの所属である。

 さて、本作『警部ヴィスティング カタリーナ・コード』である。

 ノルウェー警察の「ヴィスティング警部」が日本に初めて登場したのは2015年のことだった。書店で見たハヤカワ・ミステリの一冊、グレーの表紙に巻かれた真紅の帯に、〈「ガラスの鍵」賞 マルティン・ベック賞 ゴールデン・リボルバー賞 三冠受賞!〉の文字が燦然と輝いていた。当然のように手を伸ばした。面白かった。
──ところがその『猟犬』以降、著者ヨルン・リーエル・ホルストの名も、ヴィスティングの名前も、絶えて見ることがなくなっていた。

 2018年の秋、サロモンソンとのミーティングで、手渡されたライツカタログをめくっていると、雪原の上に十字架の形で男が横たわる印象的な絵に載せられた〝WISTING〟の七文字が目に飛び込んできた。これは、と思った。ついに見つけた! 聞けば、現行のヴィスティングのシリーズは二通りあって、一つは〈ヴィスティング・シリーズ〉四部作(『猟犬』はこちらのシリーズ)、もう一つが〈コールドケース・シリーズ〉四部作だという。どちらのシリーズも日本での版権はフリー。著者がエージェントを変えたため、フリーになったようだった。邦訳のない〈コールドケース・シリーズ〉から出版してみようと考えた。

「カタリーナ・コード」は、2018年までにノルウェー国内だけで4万5千部を発行、翌19年には10万部まで部数を伸ばしている。ちなみにノルウェーの人口は535万人、日本の20分の1以下だから、10万部という数字は日本のダブルミリオンに匹敵する。19年には英訳された北欧ミステリの最高賞「ペトローナ賞」を受賞し、名実ともに欧州では立派な大ベストセラーである。

 ライツカタログで見た雪原に横たわる男の画像は、テレビ・シリーズ「ヴィスティング」の宣伝ヴィジュアル。まず2019年4月にノルウェーとスウェーデンで放送が始まり、19年の12月28日には英国でBBCが放映を開始した。日本への上陸が待たれるところだ。

──『警部ヴィスティング カタリーナ・コード』担当者より

『警部ヴィスティング カタリーナ・コード』

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