◎編集者コラム◎ 『脱藩さむらい 抜け文』金子成人

 ◎編集者コラム◎

『脱藩さむらい 抜け文』金子成人


『脱藩さむらい 抜け文』

「登場人物の息づかいが聞こえる。江戸が眼前に、生き生きと甦る」

「等身大の人物の喜びや悲しみを読みたいあなたに、精緻で極上な江戸の物語を」

 と、テレビやラジオなどでも大活躍中の東京大学史料編纂所教授・本郷和人先生もご推薦の「脱藩さむらい」シリーズ第三弾が発売となりました。

 脱藩した義弟の兵藤数馬を追うため、妻・万寿栄を国許に残したまま、風雲吹き荒ぶ江戸へ向かった主人公──香坂又十郎の孤軍奮闘する姿を描く本シリーズ。

 藩の身勝手な事情で脱藩扱いにされたり、江戸屋敷の目付・嶋尾久作から非情な裏仕事まで押し付けられたりと、滅入ってしまうような不幸不運が次から次へと主人公に襲いかかって来ます。

 もはや家中の誰も信じられず、孤独に陥りそうな又十郎を癒してくれるのは、船頭の喜平次や飛脚の富五郎ら、源七店でともに暮らす人々。そして、波除稲荷をねぐらとする太吉や捨松ら五人の孤児。

 彼らは一緒に居酒屋へ飲みに出かけたり、築地あたりで釣りをしたりと、ともすれば沈みがちな彼の気持ちを持ち上げてくれます。

 しかも、温厚篤実を絵に書いたような又十郎に働き口まで見つけて来るほど、みな優しいのです。

 貧しい者同士、弱い者同士、日々生きていくためには助け合いが必要だと分かっているのでしょう。

 そんな心優しき仲間が紹介した職業とは、さて一体?

 答えは、又十郎の趣味と、万寿栄との国許での生活の一コマに──。

「付添い屋・六平太」シリーズ累計四十万部突破の著者が描く、良質な武家小説をぜひご覧ください。

──『脱藩さむらい 抜け文』担当者より
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