◎編集者コラム◎

『ごめんなさいといえる』三浦綾子


死ぬがよく候2編集中
2014年に刊行した単行本(左)が、文庫本(右)になりました。解説は、三浦綾子記念文学館の館長である田中綾さんです。


 『氷点』でデビューし、『塩狩峠』『泥流地帯』『銃口』など数多くの名作を遺された作家、三浦綾子。本書は『氷点』が誕生して50年となる2014年に、単行本未収録だったエッセイをセレクトして作られた本の、待望の文庫化です。三浦綾子の作品をもっと知りたいと思っている方に、その多彩で奥深い世界を知ることができる、オススメの1冊です。

 第一章は、『氷点』『続氷点』についての文章を集めました。また、夫光世さんのインタビューと当時の光世さんの日記を掲載しました。知られているように、『氷点』は朝日新聞社の一千万円懸賞小説募集に応募し、一位を勝ち取りデビューとなった作品です。本書では、執筆の経緯をはじめ、新聞連載中の評判や、登場人物にモデルはいたのかといった話題から、すぐにドラマ化や映画化された際の俳優や女優についてまで、様々です。

 第二章では、自作についてや忘れ得ぬ人たちについて、短歌についてのエッセイなどを収録。短歌ついては、解説を執筆してくださった田中綾さん(三浦綾子記念文学館/北海学園大学教授)も詳しく述べられています。作家デビュー前の表現手段が短歌であって、亡くなった恋人の前川正や三浦光世も歌を詠んでいたことなどがわかります。当時は今よりも貧しく、結核など病気で亡くなる人も多かったわけで、自らの喜怒哀楽を託せる短歌が身近な存在だったのではと思わせます。

 印象的な書名は、以下から取られています。「私はね、人間って『ごめんなさい』と神様にも人にもいえる。自分が許してもらわなければならない存在だと知ることが大切だと思うの」。

 敗戦後、13年に亘る闘病生活のなかで恋人を亡くし、クリスチャンとなって、初めて書いた小説『氷点』が大ベストセラーとなって作家生活に入った著者。どの文章も素直で瑞々しい感性に溢れていて、著者の生き生きとした心情が伝わってきます。

 キリスト教に根ざし、愛や許しを考え続けた著者の優しさに満ちた一冊です。

──『ごめんなさいといえる』担当者より