◎編集者コラム◎

『ロマンシエ』原田マハ


ロマンシエ
2015年の秋、都内の駅構内にずらりと貼られた
小説『ロマンシエ』とリンクした展覧会のポスター。

 九年ほど前、あるインタビューでお会いした原田マハさんが「いつかロマンシエというタイトルの小説を書きたい」と話されました。決まっていたのはタイトルと、かわいいものが大好きで同性が恋愛対象の男の子が主人公、ということだけ。

 それまでに発表されていた原田さんの作品を愛読し、原田さんが紡ぐ言葉の温かさに励まされ、力をもらっていた私は、その場で小説のご執筆をお願いしました。ただただ楽しそうに、まだ小説の卵の卵だった『ロマンシエ』のことを話す原田さんの姿に、きっと誰かの背中を押してくれる希望のある小説になるんだろうという、淡い予感と高揚を感じながら、まだ見ぬ『ロマンシエ』の結末を想像したものです。

 それから二年後、弾丸取材ツアーでフランスのパリやドーヴィルを訪れ、だんだんと作品の輪郭が見えてきた『ロマンシエ』という小説は、美智之輔という乙女な男の子がカリスマ小説家・羽生光晴と出会い、恋に夢に全力疾走するとびっきりキュートなラブコメディに仕上がりました。それも小説とリンクしたリトグラフの展覧会を開催するというサプライズ付きで。

 そう、『ロマンシエ』は本邦初、フィクションの小説からリアルな展覧会を実現した特別な一冊になりました。展覧会の長いタイトルは、作中で光晴が美智之輔に伝えた言葉がもとになっています。ストレートでメッセージ性の強いこの言葉は、展覧会のポスターとなって東京の街中に溢れ、当時、目にされた方もいらっしゃるかと思います。

 今回の文庫化にあたり、展覧会の図録に掲載された掌編を再録。東京ステーションギャラリーの冨田章館長による展覧会開催までの秘話と、単行本の刊行記念イベントでインタビュアーを務めていただいたライターの瀧井朝世さんによる解説も収録しました。フランス語で展覧会のタイトルを記した、原田マハさん直筆サイン入り特製ステッカーの読者プレゼント企画もあります。豪華コンプリート版に仕上がった文庫『ロマンシエ』をたくさんの方に楽しんでいただけたら本望です。

──『ロマンシエ』担当者より
 
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