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スノボに行くより読んでいたい「冬休み」本

 木下昌輝『戦国24時 さいごの刻』の短編は、斬新な解釈と
ミステリ小説のような展開で、そのラストは鳥肌ものでした。

丸善ラゾーナ川崎(神奈川) 市川淳一さん

「良かったなぁ! 真田丸っ!!」

 歴史初心者でも楽しめる巧みなストーリーテリングと、個性的な登場人物たち。「やたら湯漬けをすする北条氏政」や「老人に変装して大坂城に入る真田信繁」など、戦国時代好きなら思わずニヤニヤしてしまう小ネタと伏線の数々。毎年、大河ドラマを通しで観ようとしては、途中で挫折しているワタクシですが、今回は初めて最終回まで完走することが出来ました(といっても、この原稿を書いているのは、第45回『完封』終了時点ですが……)。

 てなわけで! 今回は最終回放送2日後、全国に絶賛蔓延しているはずの「真田丸ロス」なあなたにおススメの歴史小説(戦国時代縛り)3タイトルです。

 木下昌輝『戦国24時 さいごの刻』は、戦国乱世に生きた男たちの最期の一日を描いた短編集。主人公が迎える結末は分かっているのにもかかわらず、グイグイ物語に引き込まれます。その中でも特にお気に入りなのは『山本勘助の正体』。実在を疑われる人物を主人公に据えた本作は、木下さんらしい斬新な解釈とミステリ小説のような展開で、そのラストは鳥肌ものでした。

 中路啓太『三日月の花 渡り奉公人渡辺勘兵衛』は、戦国末期、仕官先を次々に変えながらも、天下に武名を轟かせた渡辺勘兵衛の生涯を描く作品。

 周囲に媚びることなく、自分の信念を貫く勘兵衛と、お家を守るために奔走する、その主君・藤堂高虎の確執と対比を中心に展開するストーリーは、歴史小説としてだけでなく、企業小説としても楽しめます。

 中路さんの著作のほとんどに言えることですが、人は光の当て方次第で聖人にも悪人にも見えるのだなぁ……としみじみ感じられるお話です。

 天野純希『衝天の剣 島津義弘伝』は、戦国史上屈指の名将として名高い、島津義弘を描いた物語。

 豊臣政権からの圧力、朝鮮出兵などの逆境に立たされながら、お家を守るため奔走する義弘の姿に強く惹かれます。若き日? の島津豊久も活躍しますので、漫画『ドリフターズ』ファンの方もぜひぜひ。

読み終えるのが惜しいくらい面白い「たまんねぇ!」本

 こんなに無我夢中で読んだのはいつ以来?
 ジョエル・ディケールの『ハリー・クバート事件』は飲み食いも忘れ、読みふけりました。

TSUTAYA寝屋川駅前店(大阪)中村真理子さん

 読書をしていて至福の喜びを感じるとき。自分の気持ちに寄り添ってくれたり、驚きや感動をくれたり、知らない世界へつれていってくれたり。やめられない! 止まらない! なんていう幸せ。達成感。感じたことはありますか? 勿体ないけど一気読みしちゃった。それこそ読書の醍醐味!

『ハリー・クバート事件』(ジョエル・ディケール著)。「海外小説って難しそう」と思ったあなたはもう既に騙されている!? こんなに無我夢中で上下巻を読んだのはいつ以来? トイレに行くのも飲み食いもそっちのけで読みふける。単行本発売時、店頭のPOPにも注意書きしました。「正しい読み方は休みの日に家にこもって一気読み! テストや試験、面接、明日朝イチの大事な会議の前日夜に何気なく読まないこと!」「きっちり上下巻を購入してスタンバイすること」です。上巻しか買ってなくて慌てふためく姿が私には見えます……。全員犯人に思えるミステリーにあっちへこっちへ読者は安心して踊らされる。何よりマーカス(主人公)のお母さんは私のお気に入りです!

『i(アイ)』(西加奈子著)。西加奈子に魂を揺さぶられるのはこれで何度目か。息つく暇もなく読んだ。夢中になりすぎて西加奈子が著者であることも忘れていた。アイ(主人公)の背後霊になったような感覚ですぐ側で彼女を見ていた気持ちだった。悲しみ、悔しさ、そんな形容できる感情を遥かに超えた感情のナイフが滝のように降り注ぐ。『ふくわらい』の時、『サラバ!』の時にこの著者はどこへ行ってしまうんだろうと恐ろしく思ったが、私の恐れなんて、全く馬鹿馬鹿しいものだった。自分を恥じました。

『朝が来るまでそばにいる』(彩瀬まる著)はさらっと読めない、だけどあちら側に“連れて行かれる”短編集。彩瀬まるは人間の心の穴を内面からぐりぐりと突っついてくる。大人でも子どもでも、いつか味わう喪うという気持ち、悲しみ、虚しさ、哀れな姿を静かに差し出す。美味しい果実のように見えてそれはどろどろに熟し腐っていて、うっかりあちら側に“連れて行かれる”。ご注意下さい。以上3種類の小説ですが、色々な気持ちを読んだ後に与えてくれる小説は本当に出合えてよかった! と読み終わった後に本を抱きしめたくなります。

 

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