国会議員基礎テスト
第四回

 問二 政策秘書について説明せよ

 

 国会法第百三十二条第二項には「主として議員の政策立案及び立法活動を補佐する秘書一人を付することができる」と定められている。

 これを根拠として、一議員当たり一人、国会議員政策担当秘書(いわゆる政策秘書)を置くことができる制度が、今から二十年ほど前にスタートした。

 政策秘書になるためには、様々なコースがあるが、その一つが国家公務員総合職試験と同等か、あるいはそれ以上に難しいとされる、資格試験をパスすることである。とはいえ橋本の場合、すでに国家公務員総合職試験に合格しているので、この資格試験は免除され、すぐにでも政策秘書として活動することが可能だった。

 議員の間近で立法に携わる仕事ができると、意気揚々と黒部の元に乗り込んだ橋本だったが、実態はイメージしていたものと、かなり違っていた。

 代議士をサポートし、法案の起草などを担当するのかと思っていたら、やらされたのは、パーティー券売りや、資金集め、陳情対応、国会見学の案内などの雑用ばかり。これでは、一般の公設秘書や私設秘書のやっていることと、大差ない。

 確かに日本では議員提出法案というものは少ない。大部分が、関係省庁の官僚が作成する内閣提出法案である。

 しかしこれでは、国会ではなく、行政が法律を作っていることになってしまう。立法府の存在意義がなくなる。

 だからこそ政策秘書という制度ができたのに、実態はまるで機能していないことに橋本はいら立ちを覚えた。

 仕事を始めたばかりのころ、一度この件について、黒部優吾に意見したことがある。

「まあ、それはきみのいう通りなんだろうけどさ……」

 優吾は人の良さそうな瞳を細め、小首をかしげた。

「アメリカでは大統領に法案提出権がないからね。すべて議員立法になる。しかし、日本の場合は事情が異なるだろう。きみも官僚だったから、これは釈迦に説法だけど、日本の法律は官僚が作っているんだ。彼らに真っ向から歯向かうのは、避けるべきじゃないのか」

 確かに、同僚だった官僚どもの鼻を明かしてやりたいという気持ちはあった。

「真っ向から歯向かうとはいってませんよ。わたしは、そもそも論をいっているまでです。国会は立法府です。だからもっと法律を作るべきです。そのために国会には法制局というものがあるし、政策秘書だって議員をサポートします」

「確かにそれはそうだよ。だけどさ。日本の場合、法案を提出するためには衆議院では二十名以上、国費を支出する法案には五十名以上の署名が必要だからね。これがかなりやっかいなんだよな」

 ここが、議員が単独で法案を提出できるアメリカ議会と違うところだ。

「他の議員の政策秘書とも、意見交換してみてはどうかね。実情がわかると思うよ。まあ焦らず、ゆっくりと取り組むことだよ。いずれにせよ、わたしはきみのように、有能な秘書を探していたんだよ」

 優吾は意味深な含み笑いをし、橋本の肩をポンと叩いた。

 

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