◎編集者コラム◎

『絵草紙屋万葉堂 鉢植えの梅』篠綾子


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 2015年12月に刊行した『月蝕 在原業平歌解き譚』が、篠綾子さんの小学館文庫での第1作でした。在原業平と陰陽師の葛木行貞が藤原一門の闇の歴史を暴き、権力争いに巻き込まれた惟喬親王の安全を守るという物語。和歌に込められた暗号を解きあかすという謎解きのある作品でした。担当者としては期待大だったのですが思ったように反響がなかったので、今度は読者が多くいる江戸時代を舞台にして書いていただくようにお願いしました。

 それで、篠さんが提案して下さったのが「絵草紙屋万葉堂」でした。そこから、具体的な事件を入れることや有名な人物を登場させるということになり、篠さんから田沼意知の殿中刺殺、山東京伝の登場をこの作品に入れていくことなど、細部が決まってきました。

 さて編集担当としては、篠さんの主な読者が女性であることを踏まえ、カバーをどう作るかを考えました。デザイナーさんとの打合せで、主人公であるさつきを魅力的に描ける人を探しました。検討した結果、苗村さとみさんにお願いしました。阿部智里さんの「八咫烏」シリーズのカバーイラストが有名なイラストレーターさんです。最近は、各社で時代もののカバーイラストを手がけていて、それが決め手になりました。花が上手で色遣いも鮮やかでしたので、この小説にピッタリだと思いました。

 この作品は絵草紙屋が舞台ですが、さつきが挑んでいくのは江戸時代の〈書店〉ではなく、当時〈読売〉と呼ばれていた新聞(瓦版)の世界です。母親が亡くなり、家業である絵草紙屋の経営が厳しくなった所で、親友のおよねに勧められたのです。偶然居合わせた田沼意知が紹介状を書いてくれたお陰で、蘭方医の大槻玄沢に母を診察してもらうことが出来たという経験をしたさつき。意知が刺殺されたことを知り、その親切にしてもらった経験を皆に知ってもらいたいと思ったのです。そして意知を殺害した侍は、さつきに縁のある人物だったのです。この件を調べ始めると、さつきはお侍の一団に脅されることに。どうやら、裏がありそうで……。この時代、多く作られていた狂歌が本作にも何首か登場します。

 さつきが人間として、そして〈新聞記者〉としてどう成長していくのか――。「更紗屋おりん雛形帖」シリーズが、2017年の第6回歴史時代作家クラブ賞のシリーズ賞を受賞した作家の、待望の新シリーズです。

ーー『絵草紙屋万葉堂 鉢植えの梅』担当者より

esoshi

『絵草紙屋万葉堂 鉢植えの梅』
篠綾子