遠く、まだ知らない土地へ! 冒険心がくすぐられる本

サン=テグジュペリの『人間の土地』は、美しい詩のような語りで綴られ、すべての命への深い愛を感じます。
書店員名前
戸田書店静岡本店(静岡) 古川明大さん

 ページを捲ると、遠く知らない土地。頬を撫でる乾いた風や人々の息づかいを感じ、人生のスパイスとしてあなたの感性をぴりっと刺激してくれる、そんな本はいかがですか?

人間の大地
新潮文庫

 まだ飛行機が安全な交通手段ではなく、人々が大空に神秘と謎を感じていた時代、あの「星の王子様」の著者、サン=テグジュペリは飛行機乗りとして、いのちの危険を冒しながらフランスからアフリカへ定期郵便物を運んでいました。その経験を自伝的小説として綴ったのが『人間の土地』です。操縦席から眺める壮大な渓谷や、美しい竜巻の連なり。まだ眠気顔した飛行機乗りを乗せ、静寂の街を走る車。その中で静かに告げられた同僚の死。そしてサハラ砂漠の真ん中に不時着し、死の淵を彷徨いながら見た流星の数々。すべてが美しい詩のような語りで綴られ、この星に住むすべての命に対する深い愛が感じられます。宮崎駿さんの表紙も素敵です。

 

神々の
集英社文庫

 最近ではクライミングやボルダリングをする人も多く、山を楽しむ人も増えていますが、山に対し何の知識もなかった私に、その雄大さを教えてくれたのがこの夢枕獏さんの『神々の山嶺』でした。前人未到のエベレスト登頂を目指し消息不明となった実在の人物ジョージ・マロリー。彼のカメラをネパールで見かけたところから物語は動き出します。果たしてそのカメラにはマロニーが人類初のエベレスト登頂をしたという記録が残っているのか。  カメラを追ううちに羽生丈二という孤高の日本人登山家に行きあたり、羽生の生き様を通して主人公は山に命を賭ける意味や、これまで歩んできた人生を投影していきます。身を削りながら踏み出す一歩は、苦しくも崇高です。

 

あるけみすと
角川文庫

 世界中でベストセラーになったパウロ・コエーリョの『アルケミスト 夢を旅した少年』。この本を初めて読んだ時の衝撃は忘れることができません。スペインの羊飼いの少年がある夜、遠く砂漠に眠る宝箱の夢を見て、心の声や様々な兆しを感じ取りながら、海峡を渡り、砂漠を旅していきます。旅の途中で出会うジプシーやクリスタル商人、異国の少女や錬金術師。心の声を聞きながら、導かれるように道を進んでいく姿はフィクションでありながら、誰しもが持っている普遍的な人生の意味を描いているノンフィクションのようでもあります。

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