恐怖を楽しむホラー、強く生きたいと思わされる怪談

三津田信三さん『どこの家にも怖いものはいる』は、 ある共通点に気づいた時、更なる恐怖に背筋が凍りつきます。
書店員名前
丸善ラゾーナ川崎店(神奈川) 山田佳世子さん

 

 怖い話が好きだ。ホラー小説とか映画とか。テレビで心霊特番とか本当にあった怖い話とか放送されれば、録画してまで観てしまう。

 もちろん普通に文芸書も大好きだが、好きなホラー作家さんの新刊が出ると、読んでいた他の本を一旦置いてそっちを読みたくなってしまう。“怖いもの見たさ”というのもあるし、現実とかけ離れた物語を読むことで、ある種逃避のような感覚になるのも、なんかいいのだ。

拡散忌望
角川ホラー文庫 定価:本体640円+税

 

 最東対地さん『#拡散忌望』。前作『夜葬』がKADOKAWAの日本ホラー小説大賞の読者賞を受賞していて、今回が2作目。前作の、スマホのナビで追っかけてきて顔面をくり抜く、という何とも恐ろしい設定に度肝を抜かれたが、今作は、呪いのツイートを回避するためのリツイートに失敗すると、何と顔中の穴という穴から脳みそがドロリンチョと出てきてしまうという何とも破天荒な物語。今回は何故その呪いが発生したかを突き止める謎解き的要素もあり、真相に辿り着いた時は少し悲しくもなる。ただやっぱりラストは何とも言えない後味の悪い終わりを迎えるので流石。前作もそれが面白かった。

どこの家にも怖いものはいる
中公文庫 定価:本体660円+税

 

 三津田信三さん『どこの家にも怖いものはいる』はまさに王道ホラーだけど、何が怖いって、コレ本当のことなんじゃないの!? と思わされる作りをしているのだ。イヤ本当のことなのかも。中央公論新社さんが物語の冒頭に掲げる“お願い”といい、作中に出てくる警告とか、物語を更に恐ろしく、現実的なものにしている気がする。場所も時代もバラバラな5つの悍ましい怪異の数々。読み進めていくうちにある共通点に気づく。それに気づいた時、更なる恐怖に背筋が凍りつくのは間違いなし。

朝が来るまでそばにいる
新潮社 定価:本体1,400円+税

 

 彩瀬まるさん『朝が来るまでそばにいる』は、一見怪談ではないが、どの話にもこの世のものではないものや現象が出てくる。死んでも尚、毎夜食事を作りにくる妻や、子供のところに来る母親、夜になっても校舎から離れられない少女……。現象だけ読み取るとやはり怖いのだが、じゃあ彼女たちがどうして死んで尚、現世に留まり続けているのか、どうしたいのかと考えると、どうしたって辛くて切ない気持ちになってしまう。そして残された者たちはしっかり前を向いて歩んで行かなければならない、とも強く思わされる。怖いけどとても強い物語だと思う。